甲種危険物取扱者取得の記録など

理系の大学生が甲種危険物取扱者を取得したので、その記録などを書き残しておきます。情報は筆者の受験当時のものです。受験を検討する場合は最新の情報を確認してください。概略は以下の通りです。

  • 自分:理系大学生、化学系
  • 費用:12000円+試験会場までの往復交通費
  • 時間:30〜40時間くらい(記録をとったわけではないので曖昧)
  • 勉強期間:2ヶ月くらい(だらだらとやったり途中やっていない期間もあった)

 

 

動機

資格でも取るかと思い、大学で化学系の学科に進んだのでせっかくだから受験資格(下記)を満たしている危険物取扱者に挑戦することにした。

危険物取扱者には大きく甲種・乙種・丙種の3種類があり、それぞれ受験資格や取り扱える危険物などが異なる。甲種はすべての危険物を取り扱えるので甲種に挑戦することにした。

受験資格

乙種・丙種は誰でも受験できるが、甲種には受験資格が定められている。この中に「大学(等)で化学に関する授業で15単位以上を取得する」というものがあり、化学系学科に行けば当然この条件を満たすことができる。履修する授業にもよるが、1セメスターで8コマ履修する計算になるので、1セメスターだけでも受験資格を満たすことは十分可能。ただし、甲種は試験の実施回数がそもそも少ないので、出願期間に成績が出ないと次のセメスターで出願ということも考えられる。なお、この方法以外にも、乙種の資格を活用した出願も場合によっては可能である。

試験対策

甲種の試験問題は危険物に関する法令(法令/15問)・物理学及び化学(物化/10問)・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(性消/20問)の3分野からなる。合格基準はそれぞれの分野で6割以上正答することである。

このうち、物化についてはかつてのセンター試験の化学レベルの問題がほとんどなので、理系でセンター試験で化学を選択した人ならほとんど対策することなく合格ラインを超えることができると思う。

法令と性消についてはある程度自分で対策をする必要があった。これは実際に過去問や参考書を見てどのくらいの勉強が必要なのかを確認した方が良い。どちらの分野も、知識を覚えていないと解けない問題がかなりあるので、不安なら繰り返し学習して試験直前にもう一度全体的に復習するのがいいと思う。

教材

参考書は有名なものがいくつかあるようだが、近くに書店があるなら実際に足を運んで中を見てから買った方が良いかもしれない。

試験の過去問は一部を除き公開されておらず*1、試験問題は当日回収されるが、なぜか過去問も出版されている*2。必ずしも買う必要はないが、苦手な分野があったり参考書だけでは不安があったりするなら保険も兼ねて買ってもいいだろう。自分は法令が不安だったので買いました。

試験

試験時間は150分だが、解答に時間がかかるような問題は無く、すべて五択の択一マーク式なので実際にはかなり余る。解答を終了したら途中退出も可能。筆者の受験当日も最後まで残っていたのは部屋にいた受験者全体の1割もいなかったと思う。

法令は不安だったので直前にかなり対策したところ、当日は確信を持って合格ラインを超えることができた。物化は言うまでもない。性消が直前にやや疎かになってしまい、当日は不安になりながら帰ることになった。

解いている感覚としては分量の多い小テストのようなもので、とりあえず一通り解き終わってからマークミスを含めて見直しを3周くらいはしたと思う。残った時間はほとんど性消で自信のない問題に使ったが、これは知識の有無による部分が大きいので結局解答が変わることもほとんどなかった。なんとかして消去法で絞れないかと試みたりもしたが絞りきれず、二択になるみたいなことも多かった。*3

費用

資格取得に要した費用の内訳は以下の通りである。

  • 参考書:2420円
  • 過去問:2900円
  • 受験料:6600円
  • 受験会場(東京で受験する場合、笹塚にある)までの交通費

なお、資格取得後に免状(カードタイプのいわゆる免許。運転免許と同じようなもの。)を申請する場合はさらに手数料が2900円かかる。高いね。

免状を取得してよかったこと

履歴書の資格欄に普通自動車免許以外の資格を書ける。免状が手元にあれば眺めてニヤニヤすることもできる。

他に明確なメリットがないか考えたが、ちょっと思い浮かばない。例えばガソリンスタンドでアルバイトをするといった場合に採用してくれる可能性がアップするのか、化学系メーカーから採用してくれる可能性がアップするのかといったことは分からない。個人的には、まともな雇用主なら必要になった際に資格を取得させるんじゃないかと思っているので、無くてもあまり気にしていないんじゃないかと考えている。

そもそもこの資格は実務上の能力を示すものではなく、あくまでも指定数量以上の危険物を取り扱う際に必要になる資格という面が強い。例えば石油ストーブに給油する際には灯油を取り扱うことになるが、灯油は第四類の危険物である。しかし、ストーブに給油する際に取り扱う量はたかだか数リットル、ガソリンスタンドでポリタンクに給油する際にも20リットル程度であるため、免許が必要になることはもちろんない。逆に、危険物取扱者が必要な施設で実際に作業をしなければ「ペーパードライバー」のままである。

まとめ

危険物取扱者の資格は、取得がそれほど難しくない資格であるが、取得したことで直ちに大きなメリットがあるとはあまり考えられない。実務の能力を証明することもできない。ただし、知名度はそれなりにあるので資格を取得したことはアピールしやすい。また、資格を取得する過程で「期限の定まったゴールに対して現状を分析し、自分で計画を立てて行動していく経験」ができることは資格を取得する価値として挙げられる。学生の立場で考えると、就職に有利になる要素としては資格自体よりもその取得までのプロセスに関するエピソードの方が大きいのではないだろうか。加えて、化学系の科目で15単位以上取得している等の蓄積があるならば、そういった蓄積を具体的な形で活用する方法の一つであることも間違いない。

 

 

以上

*1:一部は公開されているので目安として参考にすることはできる。

www.shoubo-shiken.or.jp

*2:おそらく受験者の中に問題を暗記して帰る人がいるのではないかと思っている。

*3:もちろん絞れば絞るほど正解しやすくなるので大事な作業ではある。