電脳コイルの感想とか

電脳コイルというアニメを見た。WikipediaNHKのサイトによると、2007年5月から同年12月まで、土曜の夕方6時半からかつての教育テレビ、現在のEテレで26話が放映されていたとのことであった。放映の枠は明らかに子供を意識したものではあるが、NHKとしてはかなり力を入れていた作品ということになるのだろうか、今見てもかなり面白い作品だったと思う。

見ながら、あるいは見終わってから考えたことを備忘録的に以下に書いておく。

いわゆるSF的描写について

本作の放映された2007年時点では、本作は近未来的SF要素を持った作品であることは言うまでもない。作中で描写されているウェアラブルバイスによるAR(拡張現実)やホログラム、車両の自動運転、タンジブルなUIといった要素は、ようやく初代iPhoneが発表されたばかりだった当時のレベルでは間違いなく未来、それも近いうちに実現されるであろう未来であったのは明らかである。

「昔の近未来」を描いたSFで、描写されている内容が実現したか判定する行為は、現在の尺度をもとに後出しじゃんけんで昔のことを評価することになるのでアンフェアな感じがしてしまい個人的にはあまり好きではない。ただ、これらの技術の少なくとも一部は既に実現、あるいは実現に向けて着実に進歩していることもまた事実であると思う。自動運転はいよいよ市販の車両に実装され、自動運転であるがゆえに発生したと思われる不幸な事故のニュースも残念ながら目にするようになった。本作のキーアイテムである「電脳メガネ」も、Google Glassをはじめとしたまさにメガネ型のウェアラブルバイスが登場した。(こうしたデバイスは残念ながら社会に普及するには至っていない、今のところは)

このように、近未来を描いたSFとして適度な技術的躍進を経たリアリティを持った描写をしながら、さらに予言のように未来を「言い当てた」ことが、結果として本作を(当時だけでなく)今見ても面白いものにしている面はあると思う。

全体に通底するテーマについて

本作は現実世界と電脳メガネによってアクセス可能な「電脳空間」の両方を舞台として物語が進行していく。ここでははっきりと子供と大人の対立が表れている。

子供にとって、電脳空間は現実世界とはリンクしながらも独立したように存在するもう一つの世界である。彼らは普段常に電脳メガネを着用している。電脳空間は電脳メガネを着用している人間の中だけで閉じていて、そこには現実世界とは別のリアルがある。

一方大人にとっては、電脳空間はあくまでも現実世界の拡張、虚構、あるいは子供騙しの遊びに過ぎないと捉えられている部分がある。子供たちの親が電脳メガネを没収するシーンはまさに電脳空間で「メガネ遊び」にふける子供たちを無理やり現実世界に引き戻す行為だし、ハラケンが受診した医師も電脳メガネを手放せなくなってしまったと述べるが、これは潜在的に電脳メガネ、あるいは電脳空間のことを子供のおもちゃのように見下しているとも捉えられる。そもそも病院で電脳メガネの着用が何らかの方法により勝ち取るべき「権利」のようなものである点からも、社会、それも大人の社会においては電脳空間はあくまでも虚構の拡張現実であるといえる。

電脳空間が虚構であるからこそ、大人たちは子供たちがそこに(「メガネ遊びで意識不明になるほどの怪我をした」という情報に触れて)「過度に」入り浸っているのを知ると子供たちを現実に連れ戻そうとする。ここで、大人たちは完全に保護者としての善意で動いており、これは大人たちの視点では正しい行為でもある。大人の世界では電脳空間ではなく現実世界に依拠して生活を送っていく必要があり、したがって子供たちもいつか成長した際には、当人たちにとってはもう一つのリアルであった電脳空間から離れる必要がある。

夕焼けについて

作中で「あっちの世界」等と呼ばれる電脳空間は、必ず夕焼けや暗い夜の中のような世界として描かれている。「あっちの世界」は、登場人物の過去の記憶と強く関連している(優子は祖父の記憶、ハラケンはカンナの記憶、勇子は兄の記憶である)。子供の成長の一側面としてアイデンティティの確立、自己と他者の識別能力の獲得があるとすれば、夕暮れや夜のように他者の識別が覚束なくなる時間帯が過去の記憶とリンクしているのはこの識別能力が今より劣っていた時期に意識を遡らせることとリンクしていると考えることもできる。こう考えると、意識がより昔に遡っていくことで他者の識別が不可能な夜へと至ることも説明される。

勇子が最終話で囚われていた世界は暗闇であるし、その世界は優子と勇子の二人が作った世界である。過去に囚われることをやめた勇子は、優子のいる方向、すなわち光の見える方向に向けて走り出す。現実世界に「帰ってきた」勇子はそこで、ようやく優子のことを心から受け入れることができたのであった。

勇子の内面と髪型について

勇子の髪型は勇子自身の内面的な成長とリンクして描写されている(ことがある)。勇子は冒頭から、他の子供たちよりどこかクールで大人びているように描かれている。これは猫目と結託して行動することが多かったからと考えることもできるし、親と過ごす時間が無かったあるいは少なかったと思われることに原因の一端を求めることもできる。(勇子は作中で、金沢から引っ越してきた後は叔母と二人で食事をしているかのように描かれている。少なくとも、この年頃の子供が特段の事情もないのに親と食事をしないのは少々不自然である。ただし、例えば一時的に叔父の見舞いも兼ねて金沢から引っ越してきている可能性もある。)

勇子は普段髪型をツインテールにしており、こうした大人びた描写と比較するとアンバランスさが目立ってくる。そうしたアンバランスさもキャラクターデザインとしては魅力の一つではあるし、強く印象付けることにも繋がっていると思った。

一方、勇子がツインテールを解いた状態で描かれている場面も複数ある。夏祭りで浴衣に身を包んだ場面、電脳メガネを着用したまま寝て、悪夢から目を覚ました場面、そして最終話で病院のベッドで肉体が眠り、意識は記憶の中の世界、過去の世界を振り切り優子のいる世界に走り出す場面である。

 

1/30 追記

下書きの山に埋まっていたのを発掘した。読み返して少しだけ手直しして公開する。こういうのは印象が新鮮なうちにできるだけ早く書きあげて、少し置いて読み返すといいのかもしれない。それはそれとして、改めて振り返ってみるとかなり分かりやすい象徴化をしている作品だったと思う。また、「子供の心理」的なものに寄り添っている。そういう意味では、教育テレビらしい作品だという印象を持った。

2023年、電車に乗れば多くの人がスマートフォンを手に持ち、画面を見つめている。観察すればむしろ子供の方がスマートフォンを見ていないことの方が多い気すらしてくる。これはおそらく高価な電子機器を子供に持たせない、トラブルに巻き込まれないように機能の制限された端末を持たせるといった背景があるのだろうが、いずれにせよ子供ではなく大人の方が電脳メガネのような端末に依存しているというのは皮肉さを感じないこともない。

甲種危険物取扱者取得の記録など

理系の大学生が甲種危険物取扱者を取得したので、その記録などを書き残しておきます。情報は筆者の受験当時のものです。受験を検討する場合は最新の情報を確認してください。概略は以下の通りです。

  • 自分:理系大学生、化学系
  • 費用:12000円+試験会場までの往復交通費
  • 時間:30〜40時間くらい(記録をとったわけではないので曖昧)
  • 勉強期間:2ヶ月くらい(だらだらとやったり途中やっていない期間もあった)

 

 

動機

資格でも取るかと思い、大学で化学系の学科に進んだのでせっかくだから受験資格(下記)を満たしている危険物取扱者に挑戦することにした。

危険物取扱者には大きく甲種・乙種・丙種の3種類があり、それぞれ受験資格や取り扱える危険物などが異なる。甲種はすべての危険物を取り扱えるので甲種に挑戦することにした。

受験資格

乙種・丙種は誰でも受験できるが、甲種には受験資格が定められている。この中に「大学(等)で化学に関する授業で15単位以上を取得する」というものがあり、化学系学科に行けば当然この条件を満たすことができる。履修する授業にもよるが、1セメスターで8コマ履修する計算になるので、1セメスターだけでも受験資格を満たすことは十分可能。ただし、甲種は試験の実施回数がそもそも少ないので、出願期間に成績が出ないと次のセメスターで出願ということも考えられる。なお、この方法以外にも、乙種の資格を活用した出願も場合によっては可能である。

試験対策

甲種の試験問題は危険物に関する法令(法令/15問)・物理学及び化学(物化/10問)・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(性消/20問)の3分野からなる。合格基準はそれぞれの分野で6割以上正答することである。

このうち、物化についてはかつてのセンター試験の化学レベルの問題がほとんどなので、理系でセンター試験で化学を選択した人ならほとんど対策することなく合格ラインを超えることができると思う。

法令と性消についてはある程度自分で対策をする必要があった。これは実際に過去問や参考書を見てどのくらいの勉強が必要なのかを確認した方が良い。どちらの分野も、知識を覚えていないと解けない問題がかなりあるので、不安なら繰り返し学習して試験直前にもう一度全体的に復習するのがいいと思う。

教材

参考書は有名なものがいくつかあるようだが、近くに書店があるなら実際に足を運んで中を見てから買った方が良いかもしれない。

試験の過去問は一部を除き公開されておらず*1、試験問題は当日回収されるが、なぜか過去問も出版されている*2。必ずしも買う必要はないが、苦手な分野があったり参考書だけでは不安があったりするなら保険も兼ねて買ってもいいだろう。自分は法令が不安だったので買いました。

試験

試験時間は150分だが、解答に時間がかかるような問題は無く、すべて五択の択一マーク式なので実際にはかなり余る。解答を終了したら途中退出も可能。筆者の受験当日も最後まで残っていたのは部屋にいた受験者全体の1割もいなかったと思う。

法令は不安だったので直前にかなり対策したところ、当日は確信を持って合格ラインを超えることができた。物化は言うまでもない。性消が直前にやや疎かになってしまい、当日は不安になりながら帰ることになった。

解いている感覚としては分量の多い小テストのようなもので、とりあえず一通り解き終わってからマークミスを含めて見直しを3周くらいはしたと思う。残った時間はほとんど性消で自信のない問題に使ったが、これは知識の有無による部分が大きいので結局解答が変わることもほとんどなかった。なんとかして消去法で絞れないかと試みたりもしたが絞りきれず、二択になるみたいなことも多かった。*3

費用

資格取得に要した費用の内訳は以下の通りである。

  • 参考書:2420円
  • 過去問:2900円
  • 受験料:6600円
  • 受験会場(東京で受験する場合、笹塚にある)までの交通費

なお、資格取得後に免状(カードタイプのいわゆる免許。運転免許と同じようなもの。)を申請する場合はさらに手数料が2900円かかる。高いね。

免状を取得してよかったこと

履歴書の資格欄に普通自動車免許以外の資格を書ける。免状が手元にあれば眺めてニヤニヤすることもできる。

他に明確なメリットがないか考えたが、ちょっと思い浮かばない。例えばガソリンスタンドでアルバイトをするといった場合に採用してくれる可能性がアップするのか、化学系メーカーから採用してくれる可能性がアップするのかといったことは分からない。個人的には、まともな雇用主なら必要になった際に資格を取得させるんじゃないかと思っているので、無くてもあまり気にしていないんじゃないかと考えている。

そもそもこの資格は実務上の能力を示すものではなく、あくまでも指定数量以上の危険物を取り扱う際に必要になる資格という面が強い。例えば石油ストーブに給油する際には灯油を取り扱うことになるが、灯油は第四類の危険物である。しかし、ストーブに給油する際に取り扱う量はたかだか数リットル、ガソリンスタンドでポリタンクに給油する際にも20リットル程度であるため、免許が必要になることはもちろんない。逆に、危険物取扱者が必要な施設で実際に作業をしなければ「ペーパードライバー」のままである。

まとめ

危険物取扱者の資格は、取得がそれほど難しくない資格であるが、取得したことで直ちに大きなメリットがあるとはあまり考えられない。実務の能力を証明することもできない。ただし、知名度はそれなりにあるので資格を取得したことはアピールしやすい。また、資格を取得する過程で「期限の定まったゴールに対して現状を分析し、自分で計画を立てて行動していく経験」ができることは資格を取得する価値として挙げられる。学生の立場で考えると、就職に有利になる要素としては資格自体よりもその取得までのプロセスに関するエピソードの方が大きいのではないだろうか。加えて、化学系の科目で15単位以上取得している等の蓄積があるならば、そういった蓄積を具体的な形で活用する方法の一つであることも間違いない。

 

 

以上

*1:一部は公開されているので目安として参考にすることはできる。

www.shoubo-shiken.or.jp

*2:おそらく受験者の中に問題を暗記して帰る人がいるのではないかと思っている。

*3:もちろん絞れば絞るほど正解しやすくなるので大事な作業ではある。

オッドタクシーの感想とか

どんな記事?

オッドタクシーという、かわいい動物たちがたくさん出てくるアニメを見たので、感想などを書こうと思います!

鶏の唐揚げが好物の、駆け出しアイドルを目指している黒猫の子が印象に残ってます。

唐揚げのイラスト。いらすとやより引用。

おわりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ぼくらは都市を愛していた 」に思うこと

夏休みの宿題といえば読書感想文と自由研究の二つみたいな風潮があり、研究はいつもやっているので(本当に?)読書感想文の方をやることにしました。

読んだ本

「ぼくらは都市を愛していた 」(神林 長平)*1

kindle版で買った。夜の1時か2時くらいから読み始めて、朝の7時前くらいまでで読んだ。もっぱら漫画用にしか使っていなかったが、黒地に白文字で表示してくれていたので、小説でも読みやすかった。

なぜこの本を読んだか

以下のツイートによる。

少女終末旅行は好きな作品だったので、この本も楽しめるのではないかと考えた。

感想など

私は普段からあまり本を読まないが、中でもSFは最後に読んだのがおそらく小学生の時だったと思う。SFは我々が今現実に持っている技術を想像力によって外挿して未来のしばしば不幸な世界を描くもので、当時の私はそこで描かれる世界に対し、言いようのないおぞましさや恐怖にも似た感情を抱いたのを覚えている。当時の感情を今反芻すると、幸福を導くものとして自らが無条件に信頼を寄せていた概念としての科学技術、あるいはそれに依拠した社会の外挿先が幸福な社会ではないことに由来していたように思われる。

この感覚は今回もとてもよく再現された。テクノロジーとそれに依存しきった社会から導き出される、幸福ではない未来をじっくりと丁寧に描き出す筆致は見事だった。世界観の導入し、疑問を提起し、時には手がかりを提示しながら徐々に不安を煽っていき、最後に疑問の答えを提示する。こう書くと基本的なことのように思われるし、実際その通りなのだとは思う。ただ、それを数百ページに連なる長い文章で実際に実現できるのかというのはまったく別の話であるし、しかも読者が納得できる水準・内容で実現しなければならないことも考えるべきだろう。少なくとも今のところ小説家が職業として成立しているのは、おそらくその難しさが根底にある。

ネタバレを含むかもしれない感想

冒頭に貼り付けたAmazonのページに記載されているあらすじを引用する。

デジタルデータのみを破壊する「情報震」が地球上で頻発している。原因はおろか震源地すら特定できない。あらゆる情報が崩壊し、機能を失った大都市からは人の影が消えた。偵察のためトウキョウに進駐した日本情報軍機動観測隊は、想定外の「敵」と出会う…。

20世紀終わりから21世紀初頭にかけて我々の社会を変えたものがある。携帯電話とインターネットの普及だ。1994年、携帯電話端末の売り切り制が始まってから携帯電話は爆発的な普及を見せた。さらに、1999年にiモードEZwebが提供開始されると、2002年にはインターネットの利用人口率が50%を超えた。

www.soumu.go.jp

*1:本作の筆者、神林 長平の作品の中には「戦闘妖精・雪風」シリーズがある。私はSFのことは全然知らないが、そんな私でも名前程度は知っているものなので、彼はおそらくSFファンなら誰でも知っている作家だと思う。

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ウマの攻略法など

皆さんは馬って知ってますか?僕は知ってます。

ja.wikipedia.org

というわけで、馬を題材にした、最近話題のあのゲームをやりました。

 

そのゲームがこちら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人気ゲームの起動画面

大人気ゲームの起動画面



 

概要

いわゆる放置しつつ育成するゲームです。クッキークリッカーが有名になったあと一時期タケノコみたいに生えてきたのを覚えている人もいるかもしれません。詳細は省きますが、馬と仲良くなるのが目的です。一般的な放置型育成ゲームとの違いは、しっかりとしたシナリオがある点くらいでしょうか。

攻略

この手のゲームは普段は放置しておいて時々開くだけでも進めることができるのが特徴ですが、大抵の場合張り付く時間が長ければ長いほど早く進行するようにできています。推測される理由として、製作者側がアプリを使ってマネタイズする時に、ユーザーに広告を視聴してもらうことで収入を得るか、広告削除のために課金させることが基本的な手段となるためというものが考えられます。広告を見てもらうためには言わずもがな、広告削除のための課金をしてもらうためにもやはり頻繁に広告を見せることでユーザーにストレスを与える必要があると思われます。このゲームも例に漏れず、とにかくアプリに張り付いて進めるのが最速です。

具体的な進め方

このゲームではシナリオごとに「トレーニング」を重ねることでポイントのゲージを溜めていき、ゲージがいっぱいになるとレベルアップして次のシナリオに進むということを繰り返します。ただし、トレーニングによってゲージが溜まる量は「やる気」というパラメータに影響されていて、やる気が高いほどトレーニング1回ごとにゲージが溜まる量も増えます。

やる気は0%から100%までの間で変化し、0%〜10%未満でゲージが溜まる量はやる気がMAXの時の5分の1です。やる気はトレーニングを繰り返していくと低下していき、放置することで回復させることができます。

また、やる気をアップさせる方法として、「トーク」があります。これは文字通り、馬と会話することでやる気を回復させることができるというものです。ただし、会話の際には3択の選択肢が提示され、「Excellent」評価の選択肢ではやる気が30%増加、「Good」評価の選択肢ではやる気が15%増加しますが、「Bad」評価の選択肢ではやる気が15%減少します。なお、やる気の増加で100%を超える場合はカンストして100%になります。

なお、通常は課金で購入するアイテムとして「金のヒヅメ」と「金のニンジン」があり、金のヒヅメはトレーニングにより得られるポイントが常に2倍となります。また、金のニンジンは一定時間トレーニングをしてもやる気が低下しなくなります。

ポイント

以上がゲームのシステムの概略ですが、上でも書いた通り、このゲームでは原則としてひたすら張り付いて、やる気を無視してトレーニングを繰り返すのが(課金アイテムを利用しない限りは)最速です。

レーニングはやる気に関係なく5秒に1回解放され、12回分が解放される、つまりちょうど1分経つとそれ以上解放されなくなります。また、トレーニングにより一律で2%低下します。

一方、やる気の回復速度はその時点でのやる気の値によりますが、2%回復するまでにかかる時間は5秒よりは十分に長いです。やる気が低い時は早く回復しますが、大体10秒はかかるのではないでしょうか。しかも、アプリを閉じている間の回復ははるかに遅くなります。

従って、やる気の回復を待っているとトレーニングが解放されなくなるので、その間にやる気が0%でもトレーニングを続けていた方が同じ時間で稼げるポイントは圧倒的に多くなります。

以上の内容は、トークによるやる気の回復を考慮していません。つまり、やる気の回復には時間がかかりますが、トークなら十分に短い時間でやる気を大幅に回復させることができるので、トレーニングでシバき倒すよりも効率的な可能性もあるわけです。

この点については、実際にトークはやる気を上昇させるためには非常に有効な手段ですが、30分ごとに1回使用可能になり、最大で3回まで使用可能になるシステムになっています。従って、トークについても30分待つよりはトレーニングを続ける方がポイントを効率よく稼げるというわけです。実際のプレイでは張り付いてトレーニングを重ねつつトークによるやる気回復も併用するという方法が最も効率的となるでしょう。

小技

以上がシステムを踏まえた攻略の説明ですが、このゲームにはバグと思われるある仕様があります。

トークは基本的には30分ごとに1回分だけ回復するのですが、トークを使い切ってから回復する前にアプリを終了し、30分が経過した後でアプリを起動すると、その時点でトークが2回分回復した状態で30分のカウントが再開します。こうなってくると、常にトレーニング一辺倒で進めることは常に最適とは言い切れなくなってきます。

従って、この仕様を踏まえた真に最適な戦略としては、

  1. 通常時はやる気の低下に関係なくトレーニングを続ける
  2. 30分が近くなり、トークが回復しそうになったら一度アプリを終了し、再度立ち上げる
  3. アプリを起動したらトークを2回使用してやる気を上げ、再び1に戻る

ということになります。なお、2については、トレーニングを30分直前で終了するのではなく、残り時間とやる気の回復速度から計算してギリギリ40%となるように終了することで、2回のトークでやる気を100%にするのも良いかもしれません。ちゃんと調べていないので定量的な議論はできないですが、個人の主観としてはその方が進みが早いように思われます。RTAをする人の参考になれば幸いです。*1

その他

この手のゲームは広告が収入源の一つと書きましたが、実際にはプレイしている最中一度も広告が表示されることはありませんでした。個人的には快適でありがたいですが、少し心配にもなります。なお、本アプリには公式Twitterアカウントが存在するが、2017年1月を最後にツイートは途絶えています。開発した会社自体は存続していて、ちょうどこの記事を書いている日にも新作アプリをリリースしたことをツイートしています。

こちらは今どきのアプリらしくしっかりと広告を表示してくるので、新しい端末に対応する作業を行なっていない、あるいは広告設定が正しくされていないが対応する手間を考えて放置しているのかもしれません。

まとめ

全体としてはオーソドックスな放置型育成ゲームですが、シナリオがあるという点が特徴的です。シナリオは割としっかり作り込んであるという印象を受けました。また、シナリオがあることで終わりがある程度明確になるのも良かったです。もちろんバカゲーとしてもちゃんと面白いです。ただし、選択肢は時々理不尽なものがあるので、やる気を40%まで回復させても無駄になることもあります。

いかがでしたか?皆さんも話題に乗り遅れないうちに大人気ゲーム「うまのプリンスさま」を今すぐダウンロードしてプレイしましょう。あなたの周りの人間は全員プレイしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人気ゲームのプレイ中の画面

やれ!


以上



*1:この記事の執筆時点では誰も走っていないようです。

「ウマ娘 プリティーダービー」の感想など

ウマ娘 プリティーダービー」というアニメを見たので、少し間が空いてしまったが感想などを書き残しておこうと思う。

本作は1期と2期があるが、個人的には2期の方がより面白かったように思う。1期は主人公としてスペシャルウィークが北海道から上京して成長する物語を描いていて、もちろん主人公の成長というのは王道の展開ではあるのだけれど、どことなく「ポテンシャルのあるキャラクターが適切な指導を受けて才能を開花させる」という言ってしまえば当たり前のストーリーになってしまったように感じた。その点、2期はトウカイテイオーを主人公にして、メジロマックイーンを、同じチームでありながらライバルとして描くことで、ストーリーに深みが増していた。

また、1期と2期の違いとして、主人公が経験する挫折をどう描くかというところがあるように思う。2期でも主人公であるトウカイテイオーは挫折を経験するが、作中を通じてこの挫折を丁寧に(しつこいくらいに)描いている。トウカイテイオースペシャルウィークのようにポテンシャルのあるキャラクターなので、物語の大筋としてはやはり同じ形式にはなるが、挫折をしっかりと描いたうえで、周囲の助けも借りながらそれを乗り越え、最後には1年という長期のブランクを経ても勝利を掴む姿を描くことで、単なる成長ストーリー以上の物語を描いている。

もちろん、2期では「チームスピカ」の他に「チームカノープス」に所属するキャラクターを登場させていること、より具体的にはツインターボを登場させていることも大きい。

度重なる怪我で闘志も消えかけて事実上の引退を考えていたトウカイテイオーに対し、周囲は今までのように励ますことができずにいた一方、ツインターボはただ一人トウカイテイオーの引退を受け入れようとしなかった。トウカイテイオーと勝負したいから引退してほしくないという気持ちを直接ぶつけ、チームのメンバーに泣きつく。

ツインターボは作中では子供っぽく、レースでは複雑な戦略は考えずに大逃げするが、終盤でスタミナが切れてしまいなかなか結果を残せないキャラクターとして描かれている。そんなツインターボが(だからこそ)、トウカイテイオーを勇気づけようと、強敵もいるレースで大逃げで劇的な勝利を見せる。トウカイテイオーにしてみれば、実力から考えて取るに足らないのに一方的に絡んでくるキャラクターとして描かれていたツインターボだったが、トウカイテイオー自身が無理といったことを実現し、諦めなければ不可能に思えることでも実現できることもあるということを自らのレースで示した。

かつてシンボリルドルフに夢を見ていた自分の姿をキタサンブラックと重ね、メジロマックイーンの「奇跡を望み奮起する者には実際に奇跡が起きる」という言葉に背中を押されたトウカイテイオーはテイオーコールの中でもう一度走ることを決意したのだった。

ここまででも物語としては十分に完成度が高く、あとはレースで勝利するシーンさえ描けば終わりにすることもできるが、ストーリーはここで終わらず、今度はメジロマックイーンが怪我をして走れなくなってしまったことが明らかになる。

走りたくても走れない、かつての自分と同じような境遇にいるメジロマックイーンに対し、今度は自分が言われた言葉を返すように「奇跡を起こして見せる」と勇気づける。かつて、シンボリルドルフという夢を追いかける側だったトウカイテイオーが、今度はキタサンブラックというかつての自分の、チームスピカの、ファンたちの、そしてメジロマックイーンというライバルの夢を背負って走ることになったのだ。レースで勝利できるのが成長した証であるのは間違いないが、これでようやくトウカイテイオーメジロマックイーンが競い合う土俵が整い、お互いに実力が拮抗しただけの存在から、共に競い合い支え合う、好敵手という言葉がぴったりな存在になれたのかもしれない。

 

 

 

 

 

そんなトウカイテイオーに心を動かされたのは人生が予後不良ことゼンラチュウネン号(自称牡馬・43歳)。

「ハミチン♪ハミチン♪ハミチ〜ン」

ご機嫌なメロディと共に、日曜午後の多摩川の河川敷を闊歩する。

だが、放馬して人に被害が出ればただではすまない。逃げ出した馬を捕まえるべく、すぐに周囲の人間が動く。通行人から「全裸で目出し帽だけ着けた男が意味不明な言動をしながら歩いている」との通報を受けて警官が駆けつける。

警官の「ヒトムスコに需要はない」「ハミチンじゃなくてモロダシじゃないか」との指摘に、男は「股間のポニーがブラリアンしているだけ」「先にウマのエロをファンティアとかファンボで限定公開してる絵師どもを捕まえたらどうだ」などと抵抗。警官としては出るとこが出てる以上、ひとまず公然わいせつの現行犯で逮捕しようと目出し帽を脱がせるが、外れた途端に物音に驚いた男が激しく抵抗。逆立ちするようにして脚で警官を蹴り飛ばし、古馬とは思えない驚異的な逃げ脚を見せて逃走する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走るゼンラチュウネン号の脳裏に、子供の頃の記憶が蘇る。

1983年11月13日。母が用事で家を空けた日に、父から出かけないかと言われて電車に乗った。はぐれないようにと父の手をしっかり握って、淀駅から人波に揉まれながら歩いた先は、京都競馬場だった。

歩き疲れたからと肩車をしてもらい、どっしりとした父の肩の上から、芝の生えたコースを眺める。ファンファーレのトランペットが秋の空に高らかに響き、レースが始まる。色とりどりの勝負服に身を包んだ騎手と馬は、最初は点の集合だったが、スタンド前に近づくにつれて加速しているように見えた。激しく芝を蹴って走る馬と鞍上で涼しげに姿勢をキープする騎手が一体となって、あっという間に通り過ぎていく。ふと、ある馬が一つ、また一つと順位を上げているのが見えた。その馬を先頭に、彼らが再びスタンドを目指して走ってくる。騎手たちが鞭を入れ、父の叫び声が振動となって肩から伝わってくる。これほど短い時間の間にこれほど人が熱狂することがあるのかと、訳もわからずに父の肩の上から見ていた。

帰り道、再び父の手を握って歩いていると、父がぽつりと呟いた。

「今日一番になった馬は、やっちゃいけないと言われていることをやって勝ったんだ。」

その時の父は続けて色々と説明してくれたはずだが、当時の私にはよく分からず、この言葉だけが記憶に残っている。 だが、今なら父の言葉の意味がはっきりと分かる。頭の中に、かつてどこかで聞いたフレーズが浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 83年、菊花賞

その馬は、タブーを犯した。

最後方から、上りで一気に先頭に出る。

 

 

 

 

 

そうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タブーは 人が作るものに すぎない。

*1

 

 

 

 ゼンラチュウネンが、ひときわ強く芝を蹴った。

 

 

 

以上

 

 

*1:JRA CM『The WINNER』シリーズ(2012)より。いいCMだと思う。

www.youtube.com

今数えてみたらこれ以外に27本書いていて、毎週1本のペースだったのでまあ半年以上書いてきたことになるが、書けなくなってきてたし研究も忙しくなりそうなので、少なくとも定期的に書くのはやめることにした。

実は下書きに未完成のやつも何本かあるにはあり、気が向いたら加筆して公開するかもしれないししないかもしれない。(多分しない)

思い返せば全裸中年男性のことばかり書いていたように思われるが、最初はマクドナルドにいた子供のいじらしさに心を動かされたから書いていたらしく、少し驚いた。

収穫は数千字程度の日本語の文章の分量の感覚がなんとなく掴めるようになったこと、校正の重要さを理解したこと(これは本当に大事で、誤字脱字に限らず、書き終わって読み返すと意外と直すところが多かった)くらいかもしれない。

 ただ、書きたい文章を書く楽しさとか、こういう文章を書こうと考えながら電車に乗っている時の心の躍動する感覚を味わえたのは良かったし、実験レポートばかり書いていた期間の良い気分転換になったともいえる。

 

最後になってしまうが、読んでくれた人に感謝したい。

 

以上