オッドタクシーの感想とか

どんな記事?

オッドタクシーという、かわいい動物たちがたくさん出てくるアニメを見たので、感想などを書こうと思います!

鶏の唐揚げが好物の、駆け出しアイドルを目指している黒猫の子が印象に残ってます。

唐揚げのイラスト。いらすとやより引用。

おわりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補遺

精神障害者はどのような景色を見ているのだろうか?

この問いに答えることはそれほど簡単なことではない。

あなたが精神障害者である場合には、あなた自身が障害者であることを自覚できなければ、もちろんあなたの見る景色を障害者の見ている景色とすることはできない。

逆にあなたが健常であるという自覚を持っているとして、あなたの見ている景色が健常者の見る景色である、すなわち正常な景色であることを担保するものはいったい何だろうか。

おそらくあなたは、精神科医や脳外科医の診断を根拠にすることを思いつくだろう。あなたの脳には外科的に発見できる異常な所見は見当たらず、精神も健康な人のそれで特に問題は見つからない、だからあなたの見ている景色も正常である。明快な理屈だ。

 

さよならを教えてというノベルゲームがある。精神疾患で入院している主人公が病院を学校であると妄想する作品である。

仮にあなたの精神に異常がある場合、あなたが認識している精神科医や脳外科医は正常なのだろうか。そもそも彼らは実在するのだろうか。

彼らはあなたに診断を下せる存在だが、あなたと同じレイヤーにいる。あなたが健常か異常かを判断できるの究極的にははあなたから見て上のレイヤー、メタ的な視点に限られる。

結局我々は、「自分は狂人ではない」と思い込んで生きている。例えば何をやっても楽しくないといったようなうつ病の初期症状がこれほど広く訴えられているにもかかわらずうつ病を患う人が後を絶たないのは、我々がこうして思い込んでいることによるとおころもあるのだろう。

 

動物は美しく、人間は醜い

この「美しい」は醜いの補集合であり、beautifulよりも広い範囲をカバーしている。そして、美しいものが善であるとは限らないが、醜いものは悪である。醜いものは見た者を不快にし、他人を不快にすることは悪である。

小戸川が自らをセイウチにしたのはbeautifulになるためではなく、not uglyになるためである。

セイウチは浅黒く薄汚い色の皮をまとい、二本の不恰好な牙を生やしていて、ぶくぶくと太っていて、奇怪な鳴き声をあげている。しかしセイウチに限らず動物には愛嬌があり、従って動物は人間のように醜くはない。いじめられていた彼にとって、セイウチになることは救済で、だからこそ彼は、自他共に動物の世界というシェルターに逃げ込むことを選んだ。

小戸川の見ている世界の「異常」さはそう簡単には気付けない。小戸川にとってそれは正常な世界で、小戸川の見ている世界を知った人も小戸川に話を合わせている。

もちろん手掛かりとなる伏線が無いわけではなく、動物になった人間は原義の動物が出てくるゲームを遊んでいるし、原義の動物を飼育している描写もある。こうした部分からは当然違和感を感じることができるが、その違和感から逆引きして正解に至ることは難しい。

内部処理がブラックボックスのプログラムがエラーを吐きながらとりあえずは動作している時に、ブラックボックスの中身をそのエラーから推定するのは一般には困難であるし、場合によってはそのエラーは仕様になる。

精神障害者は視覚に問題がない場合錐体細胞の機能においては健常者と変わらないと考えられる。そうすると、障害者と健常者の見ている世界の違いは結局脳に送られる電気信号のデコード方式の違いという上書き可能なものということになるし、実際に小戸川は二回書き換えている。

 

動物は美しく、人間は醜い。あなたが少しでも動物に愛嬌を感じるなら、あなたと小戸川の距離はそれほど離れていないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補遺―作品自体について

変な文章こねくり回してなんかそれっぽいこと言ったみたいな感じで終わらせるのも嫌なので、一応もう少しだけ本編にも感想的なコメントしておきます。

作品全体としては、なんか冗長な語りとか謎に吉本芸人プッシュしてきたりとか微妙な要素も割とあるけど、一応ちゃんとストーリーを作ってたところはいいと思いました。かわいい動物で嫌なタイプのリアリティを出してくるのもありだと思います。

ただ脚本や演出をもう少しブラッシュアップする余地はありそうだなとも思いました。例えば小戸川から見た彼以外の人間を動物として描くのは良くても、小戸川が知り得ない場面ですら人物を動物として描くのは(全部が小戸川の妄想とでもしない限り)おかしいというかズルくないかという気もしますし、白川がなぜか都合よく小戸川を助けられたり、人間の嫌な部分を高い解像度で出力してる割にシナリオは都合良すぎないかという印象を抱いてしまったのも事実です。時々入る登場人物の独白も、正直長くて白々しいというか、手抜きっぽく感じてしまいました。

それでもかわいい動物たちによるリアリティ高めの群像劇として見る分には普通に楽しめました。そういう要素目当てで見るなら楽しめると思います。

以上