魔女の旅々について思うこと

白石定規による小説「魔女の旅々」(以下、「魔女旅」と表記する)の主人公「イレイナ」については、本作のアニメ化以降そのわからせに関して多くの議論が交わされてきた。ここでは、現在の主要な学説として4つの説を提示する。すなわち、積極的肯定説、消極的肯定説、消極的否定説、積極的否定説である。以下、それぞれを比較検討していく。

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ベンチに座り食事をしているイレイナ。TVアニメ「魔女の旅々」8話より引用。

1.積極的肯定説

本学説では、わからせについて積極的に行うべきであるとの立場をとる。従来からわからせはいわば「生意気」なキャラクターが対象とされてきた。本説はイレイナを生意気なキャラクターであると捉えることで、わからせに対する積極的な根拠を与えている。しかしながら、本説は提唱当初は一定の支持を集めたものの、現在では特に生意気なキャラクターであると捉えること自体に対する根拠が薄弱であるとの批判が加えられており、主流説とはなっていない。

2.消極的肯定説

本説は、わからせについて積極的な支持を表明するものではないが、一定程度の合理性があるとするものである。積極的肯定説との相違点は、積極的肯定説がイレイナが生意気であるということを根拠にわからせを積極的に肯定するのに対し、本説では生意気であるとの解釈には疑問の余地があるとしながらも、その解釈には一定程度合理性を認める余地があるとしているところにある。本説は、上記の積極的肯定説に対し唱えられた疑問を受けて提唱されたものであり、当初積極的肯定説を支持していた者が批判を受けて本説を支持するようになった例も少なくない。

3.消極的否定説

本説は、わからせについて行うべきではないとの立場をとる。その根拠としては、上記消極的肯定説と同様、わからせに関して必要とされる生意気さが欠けているという点を挙げる。消極的肯定説との違いは、消極的肯定説については生意気であるとの解釈に疑問を呈しつつもその解釈にある程度の合理性を認めているのに対し、本説ではかかる解釈に疑問を呈した上で、疑問がある以上はわからせを行うべきではないという立場をとる点にある。本説も上記の積極的肯定説が批判されるようになってから提唱されたものである。

4.積極的否定説

本説は、わからせについて行ってはならないとの立場をとる。根拠としては消極的否定説と概ね同じであるが、本説と消極的否定説との最大の違いは、消極的否定説はわからせについて行うべきではないとする一方、わからせを行うこと自体を完全に否定するものではないのに対し、本説を採用する場合、完全に否定される。すなわち、「積極的」・「消極的」とはわからせを否定する強さの度合いということができる。本説は上記の三説とは独立に当初より提唱されている一方、余地を残さないという点に対しては近年疑問が呈されている。

以上が主要四学説の概要である。特に消極的肯定説と消極的否定説については、主張する内容が比較的近いこともありしばしば初学者が混同してしまうことがある。最大の違いは、わからせに対して根拠が薄弱な場合に認めるべきか否かという点における主張である。一方、否定説については消極的・積極的の二説がある。これらの違いについては、わからせを認める余地があるかどうかであると考えることができる。

なお、現在では積極的肯定説・積極的否定説には疑問が呈されており、有力説は消極的肯定説・消極的否定説であるが、わからせを認めるにあたっては十分な理由が必要であるとの観点から消極的否定説が通説となりつつある。

 

今季はイレイナさんでいかせていただいております*1。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 

以上

*1:何を?